短刀   銘  栗原謙司信秀  (新々刀・上々作)

萬延元年十二月日

特別保存刀剣鑑定書(平成23225)

               ¥3,500,000(税込)

本間薫山先生御鞘書付

金着一重鎺、白鞘付

東京都教育委員会登録証(平成221214)

◎時代・国

 

江戸末期(161年前)、武蔵。

 

◎法量

    

刃長28.9(95分半) 無反り 元幅2.84(94) 元重0.82(27)

茎長11.8(39)

 

◎形状

 

冠落し造、庵棟、身幅尋常で、重ね厚く、ふくらの枯れた鋭い体配で、健全である。

 

◎鍛

 

板目に杢目交じり、地沸よくつき、地景入る。

 

◎刃文

 

互の目乱れに角がかった刃・尖りごころの刃・頭の丸い互の目などが交じり、足長くよく入り、沸よくつき、金筋・砂流し頻りにかかり、匂口明るい。

 

◎帽子

 

乱れ込んで、先小丸に返って深く焼き下げ、棟焼きとなって金筋・砂流し入る。

 

◎彫物

 

表に摩利支天、裏に梵字がある。

 

◎茎

 

生ぶ、先栗尻、鑢目勝手下がり、目釘孔1

 

◎説明

 

栗原信秀は文化12年、越後国西蒲原郡月潟村に生まれた。文政12年、京都へ上り鏡師となったが、嘉永3年に江戸に出て清麿門に入り刀鍛冶となった。慶応元年春には上洛して筑前守を受領し、大坂にも滞在して作刀した。後に江戸に戻り、さらに明治7年夏には越後三条に帰って、同10年には弥彦神社の御神鏡の製作を行っている。明治13125日、東京本郷元町の養子信親宅に於て、66歳で没している。

彼の技量は清麿一門中最も卓越しており、師清麿に迫る出来映えのものがある。また彫物を得意とし、多くの作品に施している。

本作は清麿一門が得意とした冠落し造のふくら

が枯れた鋭い体配で、角がかった刃や尖りごころの刃・頭の丸い互の目などが交じり、足が長くよく入って、金筋・砂流しが頻りにかかり、明るく冴えていて、彼の特色が充分に示された一振である

 

また刀身に施された入念な摩利支天の彫物は同工としても稀な図柄で、彫技が巧緻であるところから、「彫同作」の添銘はないが信秀の手になるものと思われる。鍛・刃文・彫物の三拍子揃った信秀の優品は数少なく、貴重である。


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